セーラー服を脱がさないで 前編



今日は、お盆休みの初日。
昨夜二人して夜更かしして(何してたかは聞かないで。)
お昼少し前に起き出して、食事を済ませてすぐ、
面倒くさいとぶつぶつ文句言いまくりの卓に喝を入れながら
今日に予定していた大掃除に取り掛かった。

「…あ、これ。…ここに入れてたんだ。」
衣装ケースの中から、ビニール袋に入れてあった服を取り出した。
紺色の、プリーツのスカートに、セーラー服。
ほんの、数ヶ月前まで、あたしはこれを着て、毎日登校していた。
何となく、捨てるのが忍びなくて、引越しの時、クリーニングに出して
戻ってきた制服を、持っていく荷物に入れて、荷造りした。
引っ越して来て、荷物を整理した時に、
取りあえずその季節には必要のない衣類と一緒に衣装ケースの中に入れて、
そのままになっていたのだった。
「茜ー、おまえ、1人でサボってないで…。」
卓の声に、あたしはあたふたと制服を袋に放り込んでクロゼットの中に隠した。
「…どうした?」
クロゼットの扉を閉めたのと同時に、卓がドアを開けて入ってきた。
「…な、なんでもない。」取りあえず笑ってごまかす。
「今、何か隠さなかったか?」
…なんで、そう言う事に関しては、目ざといかな、卓って。
「…何も隠してなんかいないよ。」
「…ふーん…?ま、いいや。ひと休みしよう。」
「うん、お茶淹れるね。」

卓をごまかせたと思って、あたしは油断してた。
キッチンに行って、やかんに水を入れて火にかけて、
あたしは卓が奥の寝室から出てこないことに気が付いた。
”まさか…ね?”そーっと寝室のほうに行くと…。
「…卓!?」
クロゼットの扉が開いていて、さっき隠した袋を出していた卓と視線がぶつかった。
…もちろん、袋の口は開いていて。おそらくもう中身も見たのだろう
「な…な…ナニしてんの!?」
「何隠したのかと思って。そしたら、まぁ…。」
面白いものが出てきたなと。嬉しそうに卓が言った。
「やー、もう!返してよー!」
卓の手から袋を取り返そうとしたけど、
あたしより30センチ近く背の高い卓が、袋を頭上に上げてしまえば、
150センチそこそこのあたしにはもう、手が届かない。
「やだもう、ふざけてないで返してってば!」
「そうだな…俺のお願い聞いてくれたら、返すよ。」
「お願いって…何よ。」
聞き返した瞬間、いやな予感が、した。
この状況下で『お願い』だなんて、どう考えたって…。
アレしかないでしょ。
「コレ着て。」
…あああ!!…やっぱり…。



「ぜ…絶対イヤ。」
一応笑顔で拒否権発動。引きつってると思うけど。
「見てみたい。」
その拒否を、満面の笑顔で卓があっさり却下してくれる。
うむむ…何でこの人、自分の願望がかかってると、こんなに強いんだろう…。
しかも、こう言う時に限って、思わずうっとりする位優しい笑顔で…。
…はっ!騙されるな自分っ!!
今まで何度この笑顔にほだされて来たか…!
「イヤ。卓変なこと考えてそうだから。」
「変なことって?」
…あ、しまった。自分で墓穴掘ってどうするかなあたし!
卓にまんまと口実与えちゃったよ…。
「ふーん、変なことねぇ…。」
もうもうもう!何でそんなに嬉しそうなの!?
「こう言うこと?」
胸触るし!…正面から臆面もなく来るか!?
いや…だからって背後から来られても困るんだけど!
いつの間にか後ろに回りこんで、あたしが呆然としてる間に、
早業で、慣れた手つきでシャツのボタン3つ目まで外してるそこの人!!
「…もう、卓っ!」
「俺、茜の制服姿見たの、中学の時と、高校合格が決まった時しかないんだよね。
…だから、この機会にもう一度、ちゃんと見ておきたいんだけどな?」
…この機会って…この機会って…どんな機会よ!
それより、耳元でその声で囁くのは反則でしょ…。
「なぁ、茜。」
「…ひゃ…っ!!」
ジーパンのボタンに指をかけながら、右手はしっかりあたしの胸を触ってる…。
耳元で名前を呼ばれて。耳舐められて…。
…腰砕けそう…。
「これ着て見せてくれたら、この後の大掃除頑張るけど?」
…そんな事しなくてもお願いだから頑張ってよ…。
シャツの胸元開かれて、首筋にキスされる。
「…っ!…着て見せるだけだからね!?…へ…変な事したら怒るから!」
「OK」制服の入った袋を抱えて、あたしは寝室へと引っ込んだ。
「…覗かないでよ。」
「はいはい。」

そして、10分後…。
着替えて鏡の前で、ため息ついてるあたしがいた…。
”まさかこれをもう一度着ることになるとは…。”
セーラー服に袖を通し、紺色のハイソックスを履く。胸元のリボンを結ぶ。
それだけで。…5か月前に戻ったような錯覚。
卓が迎えに来てくれる日を、待ち続けてたあの頃のあたしに…。
ドアを開ける。出てきたあたしに、卓が一瞬目をみはる。
…そんな嬉しそうな顔で見ないでよ。
「あ…あんまり見ないでよ…。」恥ずかしいから。
「俺も着替えようかな?」
「…は?」
「スーツに。」
それはもしかして…いやもしかしなくても教師役のつもりかい!?
卓の意図を悟って、あたしは卓の脇腹に一発肘打ちを決める。
…この位しても罰は当たらないと思う。
「…ってー…あーかーねー…おまえなぁ…。」
「…もういいでしょ?要望どおり見せたからね!…っきゃ…っ!!」
寝室に戻って着替えようとしたあたしを、背後から腕の中に捕獲して卓が耳元で言った。
「そんなに慌てて脱ぐ事もないって。もっとよく見せて…。」
…これって…やっぱり…。
だーかーらっ!当然のようにその胸を触ってる手はナニ!?
こう言う時の卓の言葉は信用できないって…今まで何度も身をもって体験してたのにっ!
またしてもまんまと騙された自分の迂闊さをちょっと呪いたいかも…。
…もうもうもう、金輪際信じないからねっ!



男の人って…そんなに制服姿が好きなんだろうか?
卓もやっぱり好きなのかな?
高校生の頃、制服姿で街を歩いていると、知らない男の人によく声をかけられた。
片っ端から無視してたけど。
だって、卓以外の男の人なんて、興味ないもの。
そんなことを考えている隙に、卓の手がセーラー服の裾から侵入してきてるし…。
「ちょ…卓!」
「んー?」
「へ…変な事しないって、言ったじゃない!」
「うん、『変な事』しないとは言ったけど、『何も』しないとは言ってないよ。」
「…いやー、もう!そう言うの屁理屈って言うんだよ!…やぁ…んっ!」
「茜、これ、スカート短すぎ。…高校の時、こんなのはいて他の男に見せてたのか?」
卓の手が、太股のあたりに触れる。
「ちょ…っと、何バカなこと…言って…。」
「前見た時はこんなに短くなかったはずだけど?」
…三年半近くも前のこと、よくそんなに覚えてるわね…。
確かに、2度ほど裾上げしたけど……なんて、感心してる場合じゃない。
「…っやん!!」だからどうしてそう人のこと荷物みたいに担ぎ上げるかな!?
ベッドの上にぽい!って感じで放り出されて、
反射的に起き上がろうとしたあたしを
卓が上からのしかかるようにしてきて、動きを封じられる。
…うわ!スカートがっ!…めくれあがってるっ!
むき出しになったかたちの太股に、なんだか微妙に硬いものがあたる。
最初は膝か何かだと思ったけど…膝が当たってるならもっと痛いだろうし…。
そろそろとその辺りを覗き込む。
え。これって…!?いやぁー!
「…!!」それが何か気が付いたあたしは、卓の体の下から逃げ出そうとする。
「…こら、逃げるなって。」
逃げるわよ!今は真っ昼間で、大掃除の途中なの!
しかもこんな格好のままでされるなんて絶対やだぁ!!
…した後で、まだ予定の半分も終わってない掃除の続きなんて、多分、無理。
じたばたするあたしの足を、卓が両膝で挟むようにして動きをブロックする。
脇のファスナーを開けられて、胸元のリボンを解かれる。
「…もう!卓、やめてってばっ!掃除今日中にやらないと、
明日からの予定が全部狂うんだよ!?」
「今日中に終わればいいんだろ?大丈夫大丈夫。」
「だけどね…んっ!」
尚も反論しようとしたあたしの唇は、卓の唇であっさりと塞がれて、
言いかけた言葉はそのまま日の目を見ることはなかった。
…あたし、これからも、いつもこうやって誤魔化されて行くんだろうか…?


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