First Kiss 〜 Akira's side 〜 



「…君、彰君?」彰は自分の名前を呼ぶ声に、ハッと我に返った。
小夜子が、僕の前に立って、上半身を屈めて座っている僕をのぞき込んでいた。
時々、カラーコンタクトでも入れているのではないかと思うほどの
色素の薄い茶色の瞳が、じっと僕を見ていた。
「あ…ごめん。」
「…今日はなんだか、心ここにあらずって感じだよ?」
「ごめん。」僕はもう一度小夜子に謝った。
「ミルクティー1本奢りで許す。」
「安っ!そんなんでいいの?」
「え、もっと高くてもいいの?じゃあねぇ…。」
「…ごめんなさい見栄はりました、ミルクティーご馳走させて下さい。
…今買って来るから少し待ってて。」
「うん。」

小夜子と付き合いだしたのは、二週間前から。
今日が3回目のデートだ。…と言っても、学校で毎日会っているんだけど。
こうして、学校の外で会うデートが、3回目。
最初のデートで、手を繋いだ。
2回目の時は、彼女の方から、腕を組んできた。
3回目の今日は…キスしたら、小夜子は怒るだろうか…?
さっきの考え事は、この事についてだった…。

映画を見て、小夜子の買い物に付き合って、夕方、小夜子を家まで送る。
「今日は楽しかった。…じゃあ、月曜日、学校でね。」
「ああ。じゃあな。」
”…ダメだ…タイミングつかめないや。”
「彰君。」呼ばれて振り向いた俺に、小夜子が近づいてきて、背伸びして…。
唇に、やわらかい感触が触れた。
小夜子のつけているコロンの香りが、ふわっと漂った。
「…じゃあね。」
小夜子は真っ赤な顔をして、玄関を開けて家の中に入っていった。
残された俺は…しばし呆然としていたが…。
”今のって…キス…だよな…。”
自覚したとたん、自分でも顔が赤くなるのが分かる。
「うわ…!しちゃったよ…キス。」
小夜子の方からして来た、と言うのが、男としてはちょっと情けない気もしたけど。
嬉しいやら照れくさいやら、複雑な気分だった。
でも、やっぱり、嬉しかった。
”今度のデートの時は、俺の方からキスしよう。”

家に帰った彰は、かなり赤い顔をしていたらしい。
母親に熱があると勘違いされて、体温計を渡され、布団の中に叩き込まれた。
そんな母親の誤解をよそに、彰は布団の中で、いつまでも笑っていた…。
初めてのキスが、嬉しくて、いつまでもいつまでも…。

【End.】



あとがき
…なんだか…書いてて非常にっ!照れくさかったです、この話。
いつも女の子の側の視点から話を書くことが多いのですが、
たまには男の子視点で書いてみたいと思って書いてみたら…出来たのがコレ…。

ファーストキスか…私のはいつの話だったか…(遠い目)
と、言うのは冗談です、ちゃんと覚えていますよ。
みなさんは、ファーストキス覚えていますか?

…続けて、小夜子の視点から書いたもう1つの「First Kiss」をお読み下さい。
この作品は、2つで1セットなので…。



First Kiss 〜 Sayoko's side 〜



”…あ、まただ。”
隣に座っている彰君が、考え事してる気配。
”今日、これで3度目だよ。”彰君の前に立ってみる。
”気づいてないし…。”呼び掛けてみる。
「彰君。」
…反応なし。心ここにあらずって感じ。
…おーい、気づいてよ。
「彰君?」もう一度呼んで、じっと見つめる。
あ、今度は気が付いてくれたみたい。
「あ…ごめん。」
「今日は、なんだか心ここにあらずって感じだよ」
ちょっと、責めるような口調になっちゃう。
…だって、私といるのに、ずーっと考え事してるんだもん…。
いつもよりうんと時間かけて編み込んだ髪形にも気づいてくれないし…。
私といるのがつまらないのかなって、思っちゃうじゃない…。
「ごめん。」彰君がもう一度謝る。
本気で怒った訳じゃないのよ。
今月のお小遣いピンチって言っていたから、最大限に譲歩。
「ミルクティー1本奢りで許す。」
「…安っ!そんなんでいいの?」なんて言って笑ってるし…。
そんなこと言うなら、じゃあ、もっと高いもの言っちゃうよ?
「え、もっと高くてもいいの?じゃあねぇ…。」
冗談なのに、あたふたと謝ってる。ウソだよ、本気に取らなくていいから。
彰君が飲み物を買いに行った後、私はちょっと、ため息が出ちゃった。
だって…。

彰君と付き合いだしたのは、二週間前から。
今日が3回目のデート。と、言っても、学校で毎日会っているんだけどね。
こうして、学校の外で会うデートが、3回目。
最初のデートで、彰君が手を差し出してきて…手を繋いだ。
2回目の時は、私の方から、腕を組んでみた。ちょっと、ドキドキしたけれど。
3回目の今日は…どうなるのかな…?
どうしようかな…?
私のほうから、『キスして。』なんて言ったら…やっぱり引くかなぁ…?

映画を見て、お買い物に付き合ってもらって、夕方、家まで送ってもらった。
「今日は楽しかった。…じゃあ、月曜日、学校でね。」
「ああ。じゃあな。」
…それだけ…?…あ、もう行っちゃうの?待って待って…!
「彰君。」思わず呼び止めてしまった。
彰君が振り返った。
…えーい…!もうこうなったら…。
歩み寄って、背伸びして。
…キス。
…しちゃった…。
唇を離す。…もう、彰君の顔、まともに見られなかった。
多分、今すごく顔、赤いと思う…。
「…じゃあね。」そのまま急いで玄関を開けて、中に逃げ込んでしまった。
そのまま階段を駆け上がり、自分の部屋に入って、ドアを閉める。
…ああー…今、私、ものすごく大胆なことしちゃったような…。
心臓がものすごくドキドキしてる…。
”月曜日学校で会ったら、どんな顔したらいいんだろう…。”

彰が今、帰り道でしみじみ喜びを噛みしめていることを、彼女は知らない。
”…今夜、眠れそうにないかも…。”

【End.】


あとがき
「First Kiss」の小夜子バージョン、です。
先に書いたのは、彰からの視点でしたが、
その時小夜子がどんなことを考え、自分からキスしたのか、
書いてみたくなったので…。

女の子は時に自分でも信じられないくらい大胆になることもあるのかも…。
ちなみに、私の中の2人の年齢設定は、中学生…かな?
キスの先は…君たちにはまだ早い。(笑)
おかーさんは許しませんよ!(爆)


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