部屋に戻ると、奈槻は急に無口になった。
「さっき、何を言いかけたの?」
亮介の指が、奈槻の髪に触れる。奈槻の体が、ぴくっと震えた。
「奈槻…?」
「…迎えに来てくれるなんて、思わなかった…。」
「どうして?」
「…もう、誰か他の人が、そばにいるんじゃないかって…思って…あ…っ…!?」
亮介の腕が奈槻を後ろから抱きしめた。
「そんなに、次々と誰かを好きになれるほど、器用な人間じゃないって、
奈槻が一番良く知ってると、思ってたんだけどな…。」
「だって…4年も経って…んっ…!」そのまま振り向かされてキスされた。
「…誰か、他の人と一緒にいた方が、よかったか?」
「…!」奈槻は俯いて首を横に振った。
「…亮介…!?ちょ…ちょっと待って…!」
亮介はベッドの上に奈槻を押し倒した。
「いやだ。…4年待ったんだ、もう、待たないよ」
「りょ…亮介…!」 奈槻の声には耳を貸さず、亮介は奈槻の服をあっと言う間に脱がせてしまう。
そして、自分も服を脱ぎ捨て、奈槻を抱きしめた。
奈槻はもう、何も言い返せなかった。
そのまま、亮介に全てを委ねた。
亮介の唇が、奈槻の唇から首筋に移動する。
その時、控えめな、でも甘く優しい香りに亮介は気がついた。
こんな香りを身に纏う女性に、心を動かされない男は、いないだろう…。
一度憶えてしまったら…多分きっと、忘れられなくなる…。
奈槻がこの名前をつけたのも、頷ける…そんな香りだった…。。
「…これ、新しい香水?」
首筋から鎖骨の窪みに唇を滑らせながら尋ねる。
「そうよ。…あ…っ!」
「…いい匂いだな…」
亮介の手が、奈槻の胸を愛撫しはじめる。
ゆるやかに、だが確実に、奈槻の中で、快感が高められていく。
亮介の唇が胸へと降りて行く。
胸の蕾を交互にゆっくりと舌でなぞるように愛撫すると、奈槻の呼吸が乱れ始める。
「ふ…ぅっ!」
亮介の指が奈槻の秘めやかな部分に触れ、
秘裂を広げるようにして忍び込んで来た。
そこはもう濡れ始めていて、たやすく亮介の指の侵入を許す。
少し指を動かしただけで、愛液が溢れて、亮介の指を濡らす。
「亮…介!」奈槻はいやいやをするように首を横に振った。
亮介の手を退かそうとした。
だが、亮介は逆にその手を取って奈槻の動きを封じて、
さらに指で奈槻の一番敏感な部分を愛撫する。
「…亮介、お願い…もう…!」
奈槻の声に切迫した響きが混じる。亮介は、奈槻にキスをしながら愛撫を続けた。
すぐにでも奈槻の望みを叶えてやりたいとも思ったが、
その反面、ぎりぎりまで焦らしてみたいと言う気持ちもあった。
「…っ!あっ…亮介…私…もう…本当に…」
奈槻の頬が上気し、目も潤んで、今にも泣き出してしまいそうだった。
その表情が、亮介をさらに駆り立てる…。
亮介の指の動きが止まった。
奈槻は一瞬ほっとして体の力を抜きかけた。
だが、それは甘かったと、すぐに思い知らされた…。
亮介の唇が、奈槻の肌を滑り降りていき…。
足を開かされ、奈槻の一番敏感な部分に到達した。
「…や…っ!…亮介、だめ…っ!…ああ…っ!」
そこに唇が、舌が触れただけで、
奈槻はそれまでの愛撫のせいもあって、すぐに上り詰めてしまった…。
奈槻の纏う香りが、さっきよりも濃密な芳香に変わってきているのに亮介は気づいた。
亮介の愛撫で、奈槻の体が熱を帯びたせいだ。
亮介は一度奈槻にキスをしてから、足を開かせ、
奈槻の中にゆっくりと自分自身を沈めていく…。
「…!あ…っ!」
奈槻の秘部が亮介自身を纏いつくように締めつけて来る。
奈槻は亮介の背中に腕を回し、強く抱きしめた。
「…奈槻…」
亮介も奈槻をきつく抱きしめて、徐々に動きを早める。
二人の繋がってる部分が熱を帯び、亮介が動く度に淫らな音が響く。
その音が二人をより淫らな気持ちに駆り立てる。
「亮介…やぁ、も…だめ、私…また…っ!」
「…俺も…。」
亮介は奈槻の細い腰を引き寄せ、激しく打ちつけるように突き上げる。
「あっ!…ぁ…んっ!亮介…っ!」
奈槻は絶頂を迎え、亮介も…。
「く…っ!…奈槻…!」奈槻の中に全てを出して果てた…。
奈槻は、身も心も、深く深く満たされた気がした…。
ようやく、亮介のそばに、戻って来れたのだと、実感できた…。



二人は抱き合ったまま、しばらく気怠い余韻に浸っていた。
奈槻は、時差の変化と、亮介に抱かれた後の疲れで、うとうととまどろみかけていた。
そして、慌ててはっと目を覚ますと言うことを何度か繰り返していた。
亮介は、そんな奈槻を見て笑いながら、奈槻をぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫だよ、ここにいるから。疲れてるだろ?…眠っていいから…。」
「う…ん。」
返事をしながらも、奈槻の意識の大半は夢の中に行きかけている。
「おやすみ。」
奈槻は、亮介の香りに包まれて、安心したように眠りに就いた。
起きている時は少しきついと良く言われてしまう奈槻の眼差しと表情が、
眠った途端に影をひそめ、無防備な寝顔になるのも、相変わらずだった…。
亮介は、脱いだ時の形で床に落ちたままのスーツのポケットから、
青いベルベットの小箱を取り出した。
小さな音を立てて、蓋を開く。
中には、眩しく煌く、透明な宝石のついたプラチナの指輪があった。
…それは4年前、ワシントン行きの話が出た時、密かに用意したものだった。
あの時渡す事が出来なかったその指輪を、亮介はデスクの引き出しの奥底に
ずっと入れたままにしていた。
奈槻の帰国を知り、迎えに行こうと決めた日、引き出しからその小箱を取り出した。
”もし、奈槻の気持ちが、あの時と変わらずにいてくれたなら…。
今度こそ、これを奈槻に渡そう…。”と、決めて…。
明日の朝、目覚めたら一番に奈槻に渡そう…。
亮介はケースの蓋を閉めて、再びポケットに戻すと、
奈槻を腕の中に抱きしめ、眠りについた。



…忘れられない香りの記憶が、一度は離れかけた二人を再び結びつけた…。

…あなたにもありませんか?

心に残る、忘れがたい香りの記憶…。

【End.】



HOME   NOVEL   BACK   NEXT