プロローグ
少年には一つ年下の幼なじみの少女がいた。
近所には少女と同じ位の年の女の子はいなくて、
少女はいつも少年の後を追いかけて来た。
面倒くさいと思うこともあったけれど、
一生懸命に自分の後をくっついてくる少女を見て、
少年は密かにその少女のことを可愛いと思っていた。
だがある日、近所の子に二人でいる所をからかわれ、
少年はつい言ってしまった。
「俺はこんな泣き虫のブス嫌いだ!」
はっと気づいた時にはもう遅かった。
少女は目に一杯涙をためて少年を見て、
その後すぐに、家に帰ってしまった。
それから一週間会えない日が続いた。
”今度会ったら謝ろう。”と、決めて、
いつもの空き地で、少女が来るのを、ずっと待ち続けた。
『キライなんて言ってごめん。』そう、言いたくて。
またあのにっこり笑う、かわいい顔が見たくて…。
『和くん、和くん。』と言いながら、
自分の後を一生懸命ついて来る少女に手を差し伸べて、
今度は少女に合わせてゆっくり歩こうと思って…。
だが、毎日、日が暮れるまで待っても、少女は来なかった…。
暗くなるまで待って、がっかりして家に帰る日が続いた。
日に日に元気をなくして行く少年に、ある日、母親が言った。
少女が親の仕事の都合で引っ越して行ったと…。
少年は少女にもう二度と会えないということがどう言う事なのか、
最初は良く分からなかった。
だけど、いつも後を付いて来た少女がいなくなってから、
どこへ行っても、何をしても楽しくなくなった。
…何かが物足りない。
ぽっかりと、穴があいたような気持ちになった。
少年がそれよりまだ小さかった頃、
一番の宝物だった大切な大切なおもちゃを
失くしてしまった時の気持ちとよく似ていた…。
そのことに気がついた時、
『もう会えない』と言う事の本当の意味に、少年は気が付いた。
幼すぎて、自分の手で気付かない内に壊してしまった、淡い初恋だった…。