1 プロポーズ
「…貴司!ごめんね、待った?」
「遅いよ、由菜ー!」
「本っ当にごめん!退社ギリギリに課長に声かけられちゃって…。
お詫びに今日のゴハンごちそうするから、許して、ね?」
「…いいよ、実は俺もついさっき着いたところだから。気使うなよ。」
「なーんだ、あやまって損した!」
「…こら!」貴司が拳を振り上げる真似をする。
「ウソよ、冗談だってば、怒らないでー!」
「…腹減ったな、早くメシ食いに行こう。何食べたい?」
「えーと…あ、前に行ったシーフードの美味しいお店、あそこがいい。」
「よし、じゃあ行くか。」
「んー、おいしい♪」
「由菜は本当にうまそうに物食べるよな。見てるこっちまで何か幸せになるよ。」
「そう?…もしかして貴司、私のことただの食いしん坊だって思ってる?」
「そんなことないよ。誉めてるんだよ。
一緒にメシ食いに行って、気取ってたりとか、つまらなさそうに
メシ食う奴とか見てると、腹立つんだよな。
こっちのメシまでまずく感じられて。」
「あ、それ分かる。この間、抱えてたプロジェクトが成功した打ち上げで
課の皆で食事に行ったんだけど、
後輩の子とか、自分でオーダーしといて、
『私小食だから』とか言って、平気で食べ残しちゃったりとかしてたの。
それって、作った人に対しても、ご馳走してくれた課長に対しても失礼じゃない?」
「そうだな、俺もこの間似たような事があってさ、
よっぽど喉まで出かかったよ。食い物粗末にすんじゃねぇ!って。」
「うんうん、よく分かるよ。…食べ方って、その人の人間性とか結構顕著に出るし。」
「だろう?…だから俺、おまえの食ってるところにまず最初に惚れたんだよ。」
「えー?」
「最初に会ったコンパでさ、一番食事をうまそうに食べてて、
なおかつ食事のマナーが一番ちゃんとしてたのが、おまえだったんだよ。」
「そ…そうだっけ?」
「そうだよ。付き合ってみて、他の面でもしっかりしてるし、
一緒になるならコイツみたいな子がいいって思った。…もちろん今もな。」
「貴司?もう酔ってるの?」
「…ばか、人がせっかく一世一代の決心でキメようとしてる時におまえは…。」
「え!?そ、それって…。」
「…ったく…ちょっと鈍感なのが玉にキズだけど、そこは俺がカバーするとしよう。」
貴司は、照れくさそうな顔をしながら、ポケットから、小さな箱を取り出して
テーブルの上に置いた。
「これ…!開けてみても、いい?」
「ああ。」
箱の中には、ハート型のダイヤモンドの指輪が入っていた。
「俺と、結婚してほしい。」
「……はい…。」
由菜は、赤い顔で少し俯きながら、でもはっきりと答えた。
二人は、店を出た後、いつものシティホテルに部屋を取った。
シャワーを浴びて、ベッドに場所を移して抱き合う。
貴司は由菜のバスローブの紐を解き、露わにした由菜の胸を
指と唇で優しく愛撫する。
「ん…あ…っ…!」
貴司は由菜の体に纏いつくバスローブを脱がせ、全裸にする。
そして、自分もバスローブを脱ぎ捨てた。
貴司の唇が、由菜の一番敏感な、秘めやかな場所に届く。
「あぁ…!」由菜の体が、ビクンと震える。
貴司の唇が、舌が動くたびに、由菜の体に緩やかな波のように快感が広がる。
「…!!」
優しく、穏やかな愛撫に安心しきって身を委ねていた由菜だったが、
不意に貴司の愛撫が激しいものになって、驚く。
「た…っ、貴司…!?や…あっ、ああ…っ!」
由菜は貴司の愛撫から身をよじって逃れようとするが、
貴司はそれを許さない。それどころか、一層激しく愛撫を続ける。
「あ…ぁ…貴司…貴司…っ!」由菜の甘い声が、貴司を駆り立てる。
貴司は自分のモノを、ゆっくりと、由菜の中に入れていく。
「あっ!はぁ…っ!!」
由菜のそこは、入れられた瞬間から貴司を強く締め付けて、離さない。
「くっ…由菜…っ…。」
少しでも気を緩めれば、すぐにでも達してしまいそうだった。
「あ…!あぁ…ぁっ!!」
「由菜…!!」
「貴司…た…かし…っ!…ああ…っ!」
体の奥深くまで、貴司を受けいれ、由菜は貴司の背に爪を立てる…。
由菜は、体を大きく震わせて、上り詰めた。
貴司も、由菜の中に、全てを出し尽くした…。
いつもと同じ行為なのに、今日は全てがいつもと違っていた…。
プロポーズされたせいだろうか…?
いつも以上の快感と、安堵感、深い充実感が、二人を包み込む。
貴司の腕の中で、由菜は抱き合った後の余韻に浸る。
「今、私すごい幸せかも…。」
「今だけじゃないよ。…これから、二人でもっと、幸せになろうな。」
貴司は、由菜の髪を優しく梳きながらキスをした。
…貴方の腕の中が、一番の、私の幸せの場所だったの…。
…この腕を失うのが、何より怖かった…。
その日が来るのを、私は何より恐れていた…。